Violet Evergarden 1:1

(ギルベルト)ん? どうした?


(ヴァイオレット)

少佐の瞳があります


少佐の瞳と同じ色です


これを見たときの…


こういうのを…


何と言うのでしょう?


うっ… うっ…


(ヴァイオレット)

“ギルベルト少佐”


“本日 入院120日目”


“体力は ほぼ回復”


“動作に多少 支障あるも―”


“任務の遂行は可能”


“速やかに 職務への復帰を…”


(ホッジンズ)

その少女の存在は―


ひそかに隠されていた


だが その少女を知る者は―


彼女を“武器”だと言った


命令すれば戦う


人の形を模しているだけの―


心を持たない―


ただの道具だと


(看護師)ホッジンズ中佐


こちらです


(ホッジンズ)あっ… ああ


すまない


すまない


(物音)


(看護師)あっ


(ホッジンズ)

ヴァイオレットちゃん!


大丈夫?


ケガはない?


少佐は…


ギルベルト少佐は?


あいつは来てない


(ヴァイオレット)

どちらに いらっしゃるのですか?


ご実家に

戻られているのでしょうか?


少佐のおケガの具合は?


少佐も重傷を負われたはずです


生きていらっしゃるのですか?


少佐は


あいつは…


(看護師)

あなたの退院の許可が出たの


ホッジンズ中佐は わざわざ

迎えに来てくださったのよ


まあ そういうこと


(ヴァイオレット)

失礼いたしました


ホッジンズ中佐


(ホッジンズ)

ヴァイオレットちゃん


楽にして


(ヴァイオレット)

中佐のことを失念しておりました


申し訳ございません


(ホッジンズ)いいんだよ


さあ 座るんだ


というか―


俺のこと

覚えてくれてたんだね


訓練施設の際と


決戦前夜の2回

お会いしました


うん そうだね


何してたの?


(ヴァイオレット)

ギルベルト少佐に―


報告書を書いておりました


文字を書くことは


状態復帰にもいいと

言われましたので


それで 少佐は?


(ホッジンズ)安心してよ

ヴァイオレットちゃん


俺は あいつから

頼まれて来たんだ


(ヴァイオレット)ハァ…


では ご無事なのですね


大戦には勝ったと

お医者様から教えていただきました


少佐は今

どんな任務に?


いつ 合流すれば

よろしいでしょうか?


(ホッジンズ)とにかく 着替えて


その間に 車を出してもらうから


(看護師)これ やっと届いた

あなたの荷物よ


ずいぶん遠くの陸軍基地に―


間違って 運ばれちゃってたみたい


(ヴァイオレット)ブローチ…


エメラルドのブローチが…


え?


あなたが見つかった現場と

駐屯地にあった荷物は―


これだけだと…


(ヴァイオレット)

ないなら 捜しに行かなければ…


(ホッジンズ)

ヴァイオレットちゃん!


(ヴァイオレット)

頂いた物なのです


少佐に 頂いた物なのです!


分かった


捜しておくから


俺が必ず


ですが…


(ホッジンズ)とにかく―


君は俺に同行する


それが あいつの命令だ


命令?


分かりました


(ヴァイオレット)少佐に―


次の命令を頂けるのは

いつなのでしょう?


このような状態では


できる任務に

制限があると思いますが


(ホッジンズ)

ヴァイオレットちゃん


退院祝い


好みが分かんなくて

3つ買ったんだけど―


どうかな?


不要です


いやあ… どれか選ばないと


世界が終わると仮定して

はい


3 2…


(ヴァイオレット)では 子犬を

(ホッジンズ)はい


(ホッジンズ)

どうして 子犬を選んだの?


以前 少佐の兄上に


“お前はギルベルトの犬だな”と

言われましたので


(せきばらい)


少し長い旅になるよ


この辺りの線路が

爆撃で壊れて使えないから


ライデンには

行ったことあったっけ?


いえ


(ヴァイオレットの荒い息遣い)


(ギルベルト)ヴァイオレット


君は生きて―


自由になりなさい


(荒い息遣い)


心から…


(ホッジンズ)ここに いたの?


中佐


(ホッジンズ)見えてきたね


ライデンの港


(ホッジンズ)ギルベルトは

戦争が終わったあとの―


君の身の振り方を

ずっと案じていてね


だから 自分の親戚筋で―


一番 信頼できる

エヴァーガーデン家に―


君を預けたいと言っていたんだ


(ホッジンズ)

連絡を取ったら ご夫妻とも―


喜んで 君の身元引受人に

なることを―


了承してくださったよ


(ドアが開く音)


(ティファニー)よく来たわね


(ホッジンズ)

さあ ヴァイオレットちゃん


こちら

エヴァーガーデン家の奥方


ご挨拶して


いや おじぎでいいんだけど…


(ティファニー)

今だと アンシェネから

3日がかりかしら?


(ホッジンズ)ええ


本来なら

1日で戻れたんですが―


4年も大戦が続きましたからね


復旧には まだまだ

時間がかかりそうです


さあ ヴァイオレット


あなたも飲んでちょうだい


あっ! ごめんなさい


無理しなくていいのよ


大変! ヤケドするわ


問題ありません


熱さは感じません


でも 包帯が…

早く冷やさないと


オリバー 氷を持ってきて!


(オリバー)承知しました


あっ!


(ヴァイオレット)

アダマン銀で出来た腕です


無骨ですが頑丈です


まだ 不慣れですが


いずれ 支障なくなると思われます


ん…


ちょっと こっちへ

来てもらえるかしら?


私が若いころに

使ってた物だけど


いいですね


はめてごらん


うん 似合ってるよ


(ティファニー)ホント


じゃあ 私は これで


会社に戻らなくては

ならないので


(ティファニー)あら


(ホッジンズ)

ヴァイオレットちゃん


ティファニーさんの

おっしゃることを


よく聞くんだよ


(ティファニー)いいのよ


そんなに気を使わなくても


本当の親だと思って

何でも言ってちょうだい


ねっ?


(ヴァイオレット)私には―


もともと親はおりませんので

代わりも不要です


そう言わないで


うちには息子がいたんだけど―


大戦で亡くなってしまって


(ヴァイオレット)

私は亡くなった子供の代わりには

なり得ません


まあ


ヴァイオレットちゃん


ここで幸せに暮らすことが

ギルベルトの望みなんだ


だから 分かったね?


(ヴァイオレット)少佐は―


ギルベルト少佐は―


どうして

私をここに置くのですか?


私が腕を失って―


武器としての価値が

なくなったからですか?


訓練さえすれば

私は まだ戦えます!


ヴァイオレットちゃん

もう 戦争は終わったんだ


(ヴァイオレット)

私は少佐の道具です


ですが 不要になったのなら―


処分されるべきです


捨ててください


どこかに捨ててください


(ヴァイオレット)

ホッジンズ中佐…


(ホッジンズ)

ああ 言い忘れたんだけど―


軍は辞めたんだ


俺はもう 中佐じゃない


(ヴァイオレット)

では 何とお呼びすれば?


(ホッジンズ)“社長”かな


ここは俺の会社だ


古い邸宅を買い取って

少し手を入れたんだ


1階は受付窓口になってる


(リリアン)お客様


こちらの伝票に 配達先と


差出人様のご住所を

お願いいたします


(ネリネ)

配達までには 3日少々

お時間を頂いております


(ホッジンズ)

2階は事務所と代筆部門


(ヴァイオレット)代筆?

(ホッジンズ)ああ


(ホッジンズ)

依頼者の要望に応じて

手紙とかを代わりに書く部門なんだ


まだ字が書けない人も

多いからね


(ヴァイオレット)

私も書けませんでした


少佐に教えていただく前は


そっか


戦争が終わったら

何か事業を始めようと思っていてね


政府の郵政業務は民間にまで

手が回っていないから―


いけるんじゃないかと思ってさ


で 命令だ


ヴァイオレット・エヴァーガーデン


ギルベルトは 君を俺に託した


だから 代わりに命令を下す


君は まだ役に立つ


働ける ここでな


ベネディクト


(ベネディクト)

何だよ? 社長


(ホッジンズ)そこは

“何でしょうか? 社長”だろ


(ベネディクト)で 何だよ?


イッテーな! 何なんだよ!


(ホッジンズ)

お前 今 わざと!


こいつは

ポストマンのベネディクト


会社 作る前からの腐れ縁でね


ベネディクト


彼女は ヴァイオレット


今日から ポストマンとして働く


こんなガキが?


(ホッジンズ)

任務遂行能力は抜群だ


俺は 銀行 回ってくるんで―


お前 いろいろ教えてやってね


ハァ…


荷物 ここな


(ヴァイオレット)了解しました


(ベネディクト)制服


着替えて


了解しました


お前! ちょ… ちょっと待て!


あー デカいな


問題ありません


(ベネディクト)

それは外したほうが よくないか?


郵便物 分けるのは難しいか?


(ヴァイオレット)

いえ 大きく問題はありません


(ベネディクト)

ここに書いてあるとおり別に―


そこの棚に入れるんだ


郵便物は どっさりあるけど

焦んなくていいからな


2階に休憩室もあっから


了解しました


(ベネディクト)じゃあな


(ヴァイオレット)

もうすぐ 任務完了です


(ベネディクト)

ずっとやってたのか?


休憩も取らずに?


(ヴァイオレット)

長時間の作戦には慣れています


ハァ…


じゃあ 今度は

配達 行ってみるか


配達?


(ベネディクト)

書かれた住所のとおりに

手紙を届けるんだよ


じゃあ 俺 帰るから


また明日な


(ホッジンズ)ハァ…


“業績を見てから

融資を検討する”ね


夜間の配達やってるとこも

あるのか


うちには まだ無理…


(ホッジンズ)

ヴァイオレットちゃん!


ハァ ハァ…


何やってるの?


配達です


(ベネディクト)いや 俺

配達は明日のつもりだったんだけど


(ホッジンズ)

それと 仕事の途中に

ちゃんと休憩 取ってね


退院したばかりなんだし


問題ありません


お前な


あるんだよ 問題が


ヴァイオレットちゃん

食べていいよ


食べます


食べたら

会社まで送っていくよ


屋根裏しか空いてないけど―


寝泊まりできるように

しておいたから


ああ… エヴァーガーデン家は


身元引受人には

なってくれるそうだ


君が成人するまで


でも 屋敷に置くのは…


問題あったんだな


(ベネディクト)

イッタ!


お前!

俺がやんわり言ってんのに!


お前!

俺がやんわり言ってんのに!


(ベネディクト)知らねえよ


(ベネディクト)じゃ また明日な


(ホッジンズ)送るよ


君はギルベルトから

最後に どんな命令をもらった?


(ヴァイオレット)

“逃げて自由に生きろ”と


それから


あ…


(ホッジンズ)

君は小さいころから

ずっと軍にいて―


任務を遂行するだけの

毎日を送ってきた


でも これから君は

たくさんのことを学ぶよ


だけど 学ばないほうが―


知らないほうが

楽に生きられるかもしれない


君は 自分がしてきたことで―


どんどん体に火がついて―


燃え上がっていることを

まだ知らない


燃えていません


(ホッジンズ)燃えてるよ


燃えていません

おかしいです


(ホッジンズ)いや―


燃えてるんだ


俺は そんな君を見ていて

放置した


だから ギルベルトに

君を託されたとき


これは 俺の機会だと思った


いつか 俺が言ったことが

分かるときが来る


そして 初めて―


自分が たくさん

ヤケドしていることに気づくんだ


(ヴァイオレットが手を開く音)


(男性)ドールさん?


いえ 私は

ヴァイオレットです


(男性)あっ…


えっと…

ミス・ヴァイオレット


代筆を

頼みたいんだけど


代筆?


(男性)うん


僕 字が書けなくて


だから 代わりに

手紙を書いてほしいんだ


(ヴァイオレット)

何を書くのですか?


あっ…


ここで話すのかい?


何か問題がありますか?


え?


えっと その…


田舎にいる幼なじみに


あいつ ほかの男との

縁談があるって聞いて


だから―


伝えてほしいんだ!


(男性)“僕に初めて

優しくしてくれたのは…”


(カトレア)“君だった”


“君が世界のすべてだった”


“君のためなら

僕は何でもできた”


(ギルベルト)行け!


(カトレア)

“君の気持ちが知りたい”


“君の心を分かりたい”


“今は離れているけれど”


“君のことを…”


“愛してる”


で よろしいでしょうか?


はい


“愛してる”


では 配送手続きは―


1階の受付で

お願いいたします


旦那様


自動手記人形サービスの

ご利用


誠に

ありがとうございました


(ドアの開閉音)


で あなたは誰?


どうして分かるのですか?


え?


(ヴァイオレット)

先ほどの方の“愛してる”が


なぜ分かるのですか?


(ホッジンズ)

自動手記人形の

仕事がしたい?


(ヴァイオレット)はい


ペンを握るのは

まだ困難ですが―


タイプライターなら操作可能です


(ホッジンズ)

いや そうじゃなくて


聞きたいのは

どうして その仕事が?


知りたいのです!


“愛してる”を


知りたいのです


少佐は 最後の命令のあとに―


その言葉を

私に おっしゃいました


少佐から その言葉が出たのは

初めてでした


それは

どのような状態を意味するのか―


私には理解できないのです


(ホッジンズ)普通は


それが分かるから

自動手記人形になるんだけどね


でも


いいよ


(ホッジンズ)ギルベルトの命令に

ただ従っていた彼女が―


(ドアが開く音)

初めて自分の意志を主張した


心を持たない

道具と言われた彼女が―


“愛してるを知りたい”と言った


(ヴァイオレット荒い息)


うっ


絶対!

絶対 少佐を死なせません!


んっ… んんー!


(ギルベルト)やめろ


もう やめてくれ!


生きるんだ


ヴァイオレット


君は生きて―


自由になりなさい


心から―


愛してる

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